ハンブルク音楽演劇大学・声楽科現役院生のリアルな1週間を公開
ベルリン育ちのNさん。
今回は、彼女のハンブルク音楽演大学大学院・声楽科での一週間をご紹介します。
ドイツ第2の都市ハンブルクは 欧州第2の貿易港として栄えてきた港町。
東西ドイツ統合前から、ドイツでトップレベルの音大として君臨するのが、ハンブルク音楽演劇大学です!
家賃はドイツNO.1!寮の17階から見えるエルプ・フィル

17界の窓からエルプ・フィルハーモニーが見える
今回、音大生活を教えてくれたのは 現在大学院(マスター)に在学中のNさん。
ベルリン生まれのベルリン育ち。
アビトゥアを16歳で取ってしまったのでまず
フンボルト大学の音楽学科とイタリア語科を卒業。
その後、念願のフランクフルト音大の声楽科に合格!
4年後に卒業しています。
本当はアパートを借りたかったけれど ハンブルクはドイツで一番家賃が高い街。
そこでNさんは学生寮を選択しました!
トイレとキッチンは共同で インド人とドイツ人の3人でシェア。

17階にある部屋からの眺めは最高!
あの有名なエルプ・フィルハーモニーも見えるんです。
学生寮は中央駅から徒歩10分という好立地。
天気のいい日は、大学まで川沿いを歩いて向かいます。
下見演奏(Vorsingen)は必須じゃない?意外な合格秘話

ハンブルク音楽大学メンデルスゾーンホール
ドイツの音大入試でよく言われるのが 教授に事前に歌を聴いてもらう
「Vorsingen」。
でも、Nさんの経験では、これが全く功を奏さないこともあるのだとか。
実際、事前に聴いてもらった大学は不合格。
逆に、誰一人知り合いのいなかったフランクフルト音大で、普通に合格し、主任教授に取ってもらった経験があるそうです。
ハンブルクの大学院入試の時は、フランクフルト音大での卒業試験の準備が忙しすぎて、ちゃんと本腰を入れて準備をすることができなかったそうです。
だから下見はゼロ!
試験の前日の晩に初めてハンブルク入りをしました。
ところが「下見のつもり」で受けたのに、その日のうちに教授から電話で合格の連絡がありました。

実は、とっても驚きました!
喜びは後から込み上げてくるものなんですねー
Nさんは、後から先生の1人から聞いて知ったのですが、なんと教授全員一致の最高得点(25点)で合格していたのだそうです。

でも、私はフランクフルト音大で
1番うまかったわけじゃ
全然ないですよ!
世の中分からないもんです。
実は音大生の1/3くらいは 下見なしで受かっている感覚だそうです。
さて、ここからは、Nさんの一週間の音大生活をのぞいてみましょう。
月曜日:筋肉(?!)と演技に向き合う1日
8時に起床して、いざ大学へ!
12時半からは週2回の声楽レッスンの1回目。 月曜は「発声テクニック」の日です。

私の場合、背中の筋肉が
声を支えきれていないらしく
エクササイズを教えてもらいました
14時からは演劇のグループレッスン。
オペラ、演劇、コンサート…… それぞれの演技の使い分けを学びます。

マスター(大学院)の2年生で
また演劇があるので
楽しみです。
火曜日:合気道にマッサージ?歌手は体が楽器!
10時からのセミナーは
「Bewegung(動き)」。
2時間ひたすら体を動かします!
合気道や剣道をかじったり
マッサージの仕方を学んだり
筋トレをしたり。
とにかく2時間「動き」ます。
12時からは古楽のセミナー。
ルネサンスやバロックの歌い方や 当時の楽器について深く学びます。
その後はコレペティ(伴奏)の先生とレッスン。
オラトリオ、フランス、英語、イタリア、ドイツ……
毎日別のコレペティの先生とレッスンがあって、母国語の正しい発
音を教えてもらって、レパートリーも増えるので、とても勉強になります。

練習室の予約の時間まで時間が空いている時は、友達とカフェに行きます。
歌科の学生は基本的にみんなおしゃべりです。
ハンブルク音大の周りには、おしゃれなカフェが多いから、楽しいです。
みんな自分の好みに合ったカフェを見つけてます。
ちなみに↓は、お気に入りのカフェ「Junge Die Bäckerei」です。

練習室の予約の時間に合わせて大学へ戻って、練習。
大学院生になってからは、プロジェクトやコンサートが増えました。
だから忙しさは桁違い。
1ヶ月に練習する曲は、なんと40〜60曲!
とても毎週全曲は見ていられないので、エクセルで表を作って練習し忘れを防いでいます。
水曜日:早朝の学生委員会と、パワフルおじいさん教授
水曜は6時半起き!
パン屋でパンを買って、大学へ。
コーヒーを淹れたり、パンとバターとジャムを並べたり、朝ごはんの準備をしていると、十数人の学生が集まります。
水曜の朝は8時から1時間半、AStAのミーティングがあるのです。
AStAは大学の学生会です。
ドイツでは学費に数ユーロAStA代が含まれており、その結果毎年数万ユーロを学生のために動かせるのです。
ワークショップやパーティーをオーガナイズしたり、
昼寝室を作ったり、
教授が問題を起こしたら学生サポートを可能にしたり、
話し合うことは多々あり、1時間半賑やかな話し合いが繰り広げられます。

AStAの一員だと
奨学生の選考会の時に有利に働くので
積極的にやってます。
10時 声楽のレッスン
今日のレッスンは曲の解釈に重点が置かれているので、レッスンにコレペティの先生(Korrepetitor)もいます。
今日は来週のコンサートで歌う予定のアリアを見てもらいました。
3ページ目でどうしても満足に歌えないところがあると告白すると
「昔の悪い癖が出てるよ」
と指摘されました。
身体が成長すると必要な技術も変わっていくので、信頼できる教授から的確なアドヴァイスを得ることができるのはすごく貴重です。

私の教授はロンドンの王立音楽大学でも教えているので、ハンブルクのレッスンは月曜から水曜まで。
その代わり、朝9時から夜7時までレッスンしています。
白髪のおじいさんですが、めちゃくちゃパワフルです。
下の写真のいちばん右の方です。

12時 アリアのセミナー
13時半 現代音楽のワークショップ
15時 「ヴォイス・アクロバティック」コンサートのリハーサル
16時 遅めの昼食
17時15分 コレペティの先生(Korrepetitor)とのレッスン。
今朝のアリアを教授に言われた通りに歌ってみると、嘘のように楽にいい声で歌えました。
木曜日:フェンシングにダンス!「歌ってるだけ」は嘘?
歌科の学生はダンスなどの運動系の科目をたくさんとらないと卒業できません!

選択できるコースはヨガ、タイチ、HIIT、バレエ、モダンダンス、タップダンス、ジャズダンス、バロックダンス、などなど。
私は2年間で11個のコースをクリア!
3年生と4年生の時は、楽しいからという理由でバレエやタップダンスを続けていました。
例えば、フランクフルト音大では一週間に2回、計150分の「スポーツ学」のセミナーが必修でした。
体育系ののダンス等の実技は、4年間に少なくとも11科目取得しなければなりませんでした。
それに付け加えて、2年生以降は週90分のフェンシングも必修科目でした。
オペラの舞台上でフェンシングで戦う場面もあるからです。
フランクフルト時代は、実技だけで毎日ヘトヘトで、ジムに行く必要がなくなって解約しました。
運動系の科目のほかにも、
コンタクト・インプロビゼーション、
インティマシー・コーディネート
などのセミナーもあります。

舞台上の共演者との体の接触の際に、
何らかのハラスメントにならないように、
みんな心掛けています。
木曜日は不定期で、
リートのセミナー、
演出科の学生とのリハーサル、
メンタル・トレーニングのセミナー、
コレペティ(伴奏)の先生とのリハーサル、
などがあります。
金曜日:刑務所や老人ホームで歌う「一石二鳥」の活動
フランクフルト時代からやっている「Live Music Now」のコンサートは通常、木曜日と金曜日に入れています。
オーディションに受かると「ライブ・ミュージック・ナオ」の演奏者として老人ホーム、養護施設、学校、刑務所など、普段クラッシック音楽とあまり縁のない人たちの所へ行って、45分くらいのコンサートで歌います。
朝、フランクフルト行きの電車に乗って、その日はコンサートを1つ。
友達の家に泊めてもらい、次の日は午前中に学校で2つのコンサートをして、午後老人ホームでもう1つコンサート。
終わったら電車で帰る、というパターンが多いです。
フランクフルトまで遠征し1回で4公演分のギャラを稼ぐことができるんですよ。
小学校、刑務所、養護施設、老人ホームなどでの、 1回45分のコンサート。
一回のコンサートで160〜200ユーロのギャラがいただけて、しかも貴重な経験が積めるんです!

まさに一石二鳥です!
毎回、人との新しい出会いがあり、
本当にやりがいを感じます。
土曜日:歌手の楽器作りと、戦場のようなスーパー
土曜はジムで筋トレ!
「歌手は体が楽器」だからこそ トレーニングは欠かせません。
そして家事の日。
ドイツは日曜に店が閉まってしまうので 土曜のスーパーはとんでもなく混みます!
冷蔵庫が小さいので買い過ぎには注意。
安い野菜や肉をチェックしながら、来週の献立をしっかり立てて、 また忙しくも充実した1週間に備えます!

私は料理が好きだし、
節約にもなるので、
自炊派です!
日曜日は練習日和!快適すぎる「ガラ空き」の大学と練習室予約サバイバル
ドイツ人には「日曜日は休むもの」と、仕事のことを完全に忘れて休日を楽しむ人が多いです。
Nさんも先生から
「日曜は休みない」
と言われたことがあるそうですが……。
実は、普段は予約で埋まっている大学の練習室が、日曜日はガラ空き!

この「練習し放題」の環境があまりに快適すぎて、
日曜日の練習室通いはやめられません。
音大の練習室は8時から22時まで利用可能ですが、平日はオンライン予約の争奪戦。
ハンブルク音大生のアラームは、毎日「7:58」「12:58」「17:58」に鳴ります!
練習室予約開始の8時、13時、18時を1秒でも逃すと、練習室難民になってしまうからです。
13時はアクセスが集中しすぎて、大学のWi-Fiやシステムがダウンすることもしばしば……。
でも、毎日練習に通うNさんは管理人のお婆さんと仲良し!
「巡回が終わるまで練習していいよ」
と言ってもらえるので、特別に23時まで残れることも。

朝からレッスンや講義で、
練習する時間がない日は、
とっても助かります。
政治への関心も!日曜日は「選挙の立会人」
日曜日は練習だけでなく、選挙の立会人を務めることもあります。
ドイツの若者は政治への関心が非常に強くて、意見をバシバシ言い合ってディスカッションするのが当たり前。
音楽だけでなく、社会のこと、自分の体作りのこと、そして未来のこと。
ハンブルクの風に吹かれながら、Nさんの充実した1週間はこうして過ぎていきます。
現代音楽と「Alte Musik(古楽)」が共存して、伝統を守りつつも風通しが良いのが魅力のハンブルク音楽演劇大学。
ハンブルクは大都市なので演奏会のチャンスも多く、学生のうちから頻繁にステージに立てる最高の環境が整っているのも、魅力ですね。
もし、具体的な音大選びや準備について知りたい方は、いつでも相談してくださいね。
ご相談はこちら⇩
こちらの記事もどうぞ⇩

