ドクター・ホッホ・コンセルヴァトアリウムが音大入試の滑り止めになるか検証

引用元: dr-hochs.de

ドイツの音楽大学の受験シーズン、
思うような結果が出ないと
本当に焦りますよね。

滞在ビザの期限も迫る中
「どこか今からでも
受けられる学校はないか」
と必死に探している方も
多いはずです。

そんな中、フランクフルトにある
「ドクター・ホッホ・コンセルヴァトアリウム
(Dr. Hoch's Konservatorium)」
という学校の名前を耳にし

学費の安さやビザ発給の可能性から
「ここが入試の駆け込み寺になるのでは?」
と期待を持つ人がいるかもしれません。

そこで、この学校は果たして
日本人の音大受験生にとって
駆け込み寺になり得るのか
を検証します。

ドクター・ホッホ・コンセルヴァトアリウムとはそもそも私立音大なの?

引用元: dr-hochs.de

結論から言うと、
ドクター・ホッホ・
コンセルヴァトアリウムは
「私立大学(Musikhochschule)」
ではありません。

財団がベースとなって
フランクフルト市から
多大な財政援助を受けて
運営されている
「音楽院(コンセルヴァトアリウム)」です。

「私立」と聞いて
イメージするような高い学費
一切かかりません。

大学と同等の学位が出る
「学士課程」に関しては、なんと
授業料(学費)が無料です
(入学登録時に200ユーロ程度の
諸費用がかかるのみ)。

最大の特徴は、
大学ではないにもかかわらず、
ヘッセン州の高等教育法によって
「大学の学士号と同等
(hochschulrechtlich gleichgestellt)」
の学位(Bachelor of Music)を
授与できる権限を持っている点です。

これが「私立音大のようなもの」
と理解される理由です。

クララ・シューマンも教えていたドクター・ホッホ・コンセルヴァトアリウムの長い歴史

引用元: concerti.de

「名前があまり知られていないから、
レベルの低い新設校なのかな?」
と思うかもしれませんが、
それは大きな誤解です。

実はこの学校、
1878年にフランクフルトの
高名な弁護士だった
ヨゼフ・ホッホ
(Dr. Joseph Hoch)の
遺産をもとに設立された、
とてつもない歴史を持つ
名門校なのです。

歴史を遡ると、
驚くような巨匠たちが
この学校に名を連ねています。

あのクララ・シューマンが
ピアノ科の教授として
教鞭を執っていましたし、

作曲家の
パウル・ヒンデミットや
ハンス・プフィッツナー、
指揮者の
オットー・クレンペラーなど、
クラシック音楽史の教科書に
出てくるような偉人たちが
ここで学び、また教えていました。

つまり、長い歴史を見ると
音楽史の巨匠たちを輩出した
名門です。

現在のフランクフルト市内での
立ち位置としては、
「フランクフルト音楽大学(HfMDK)」
の影に隠れている感じですが、
音楽教育の拠点の一つではあります。

同じフランクフルトにあっても、
国立音大(HfMDK)が
「演奏家や国際的なソリストの育成」
に特化しているのに対し、
ドクター・ホッホは
「地域に根ざした、音楽教育家の育成」
という役割を担っています。

そのため、音楽学校としての
格や歴史は非常に高いものの
大学(Hochschule)という
カテゴリーの検索リストに
出てこないため、
外国人受験生には見つけにくい
「隠れ家的な存在」になっているのでしょう。

ドクター・ホッホ・コンセルヴァトアリウムで学べることの一覧

この学校は、プロを目指す若者から
一般の子供・大人までが通う
巨大な総合音楽教育機関です。

大きく分けると「大学レベル」と
「地域の音楽学校レベル」の
2つの顔を持っています。

a. 大学レベル

国家に承認された4年制(8学期)の
「Bachelor of Music(音楽学士)」
の課程です。

ここを卒業すれば、
正式な大学卒業の学位が
手に入ります。

コースは「教育的・芸術的志向」
という枠組みになっており、
以下の4つのプロフィール(専攻)に
分かれています。

  • プロフィール1:器楽・声楽(Instrumentalstudien oder Gesang) ピアノ、管弦打楽器、声楽などの実技を深く学びます。純粋な演奏家コースとは異なり、将来音楽教室や私のレッスンで教えるための「教育法」もセットで学びます。
  • プロフィール2:初等音楽教育(EMP) 乳幼児や子供たちへの音楽普及、リトミックや導入教育に特化した専門性の高いコースです。
  • プロフィール3:ジャズ&ポピュラー音楽 クラシックだけでなく、ジャズや現代のポピュラー音楽の専門教育も行っています。
  • プロフィール4:作曲(Komposition) 伝統的な楽理から現代の作曲技法まで、創作に特化した専攻です。

b. 音楽学校レベル

学士課程(大学レベル)以外にも、
以下のような部門が併設されています。

  • Pre-College(プレ・カレッジ / 準備科) 将来、国立音大や本校の学士課程への入学を目指す若者のための受験準備コースです。
  • ANE部門(青少年および成人のための音楽教育) 地域の住民が趣味で楽器や歌を習うための、いわゆる「街の音楽クオリティスクール」としての役割です。こちらは有料のレッスンとなります。

日本人の音大入試の駆け込み寺になれる?

さて、本題です。

国立音大の入試に落ちてしまった日本人が、
ビザの延長や最後の砦としてここに
「駆け込む」ことは可能なのでしょうか?

厳しい現実ですが、
「ドイツ語がまだ不十分な日本人受験生」
にとっては、駆け込み寺としては
100%機能しません。

理由は主に3つあります。

① ドイツ語「B2」の証明書が入学時に完全必須

多くの国立音大の演奏科であれば、
「入学時はA2〜B1程度でも、
実技が良ければ条件付きで合格。
卒業までにB2を出せばセーフ」
という猶予がもらえるケースがあります。

しかし、ドクター・ホッホ・
コンセルヴァトアリウムの学士課程は、
出願・入学時に語学要件として
「B2レベル(中上級)」の公的証明書の
提出が絶対に必要です。

これがない時点で、どれだけ実技が上手でも門前払いとなります。

② 教育・座学中心のカリキュラムという壁

この学校の学士課程は
「教育的・芸術的志向」です。

授業では、ドイツ語の分厚い
教育文献を読み、ドイツ語で
ディスカッションをし、ドイツ語で
ペーパー(レポート)を提出しなければなりません。

「実技のレッスンさえ乗り切れば
言葉は後からついてくる」という
演奏科のノリは通用せず、
入った後に高い語学力がないと
進級すら不可能です。

③ 試験スケジュールが国立音大と完全に被る

願書の締め切りは毎年4月30日、
入試は6月前半に行われます。

これはドイツの他の国立音大と
まったく同じスケジュールです。

つまり、
「国立音大の合否結果を見て、
落ちたから7月に慌てて
ここに願書を出す」
という物理的な駆け込みはできません。

最初から選択肢に入れて
併願しておく必要があります。

※なお、学士課程に合格すれば
正式な学生ビザ(Studium)が発行されますが、
準備科(Pre-College)の場合は
週のコマ数の関係などで、単体では
正規の学生ビザが下りないケースが
多いという点も注意が必要です。

まとめ

ドクター・ホッホ・
コンセルヴァトアリウムは、
学費が無料で大学と同等の学位が取れる、
歴史に裏打ちされた素晴らしい名門校です。

フランクフルトという大都市で
音楽を学ぶ環境としては、
穴場と言えます。

でも、その実態は
「演奏さえできれば言葉のハンデを
目を瞑ってもらえる駆け込み寺」ではなく、
「ドイツ語がすでに堪能(B2以上)で、
将来音楽を教えるプロになりたい人が、
戦略的に選んで受験する高度な専門機関」
です。

もし、現在のドイツ語力に
不安があるならば、ここを
滑り止めとして期待するのではなく、
演奏科を設置している地方の
国立音楽大学を幅広く、数多く
併願していく方が、ビザを確保して
ドイツに残り続けるための
現実的なルートになります。

自分の現在の語学ステータスを
冷静に見極め、賢い受験戦略を
立てていきましょう!

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