こんにちは。
女優の橋本愛さんが、2023年8月14日に放送されたNHKスペシャル ドラマ「アナウンサーたちの戦争」の放送前取材会で「演じている間に、だいぶ(精神的に)やられてしまって」と涙するシーンがあり、話題になりました。
橋本愛さんは「アナウンサーたちの戦争」では、日本放送協会(NHK)で初の女性アナウンサーだった、和田実枝子さんを演じました。
和田実枝子さんは、ドラマ「アナウンサーたちの戦争」の主役、和田信賢アナウンサー(森田剛)の妻となりました。
そこまで病んでしまう役ってどんな役なのでしょうか。
その辺をちょっと深掘りしてみます。
橋本愛さんとNHKスペシャル「アナウンサーたちの戦争」について
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ドラマ撮影で精神的に病んだ理由3つ
当時の働く女性としての難しさ
引用元: nhk.or.jp
なんと、橋本愛さんが演じた和田実枝子さんは、1939年にアナウンサーとして日本放送協会に就職した初の女性でした。
明治時代の日本女性は法的無能力者として位置付けられていた引用元: jstage.jst.go.jp
そんな女性の立場が弱い時代に、さまざまな辛い思いを抱えながら生きなければならなかった当時の和田実枝子さん。
強い女性でありながら、言いたいことがあっても口をつぐまなければならなかった和田実枝子さんの役を演じるには、いろんな苦悩を自分ごととして受け入れなければなりません。
そうやって、がんばっても、結局、男性的な、勇ましいトーンの放送を求められ、情報局からも圧力をかけられて、がまんしても活躍の場を奪われてしまう。
役に憑依すれば憑依するほど、和田実枝子さんの当時の葛藤に橋本愛さん自身も(精神的に)やられてしまったのですね。
戦中の戦意高揚を図るための偽情報の発信
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戦前の日本放送協会には取材を専門とする記者職がなかったのだそうです。
中央から提供されるニュース原稿を、アナウンサーが書き直して読んでいたのだそうです。
和田実枝子さんが日本放送協会に入局した頃は、昭和の初期は明治憲法の下で「表現の自由」はとても制限を受けていました。
でも、第2次世界大戦が勃発してからは、報道への取り締まりがもっと強化されて、放送協会は日本の国家の宣伝のための機関になります。
その、国家の宣伝のための機関で、第2次世界大戦中に、ラジオで間違った情報を発信して敵を混乱させたり、戦意を高揚させるような放送を担ったのが、放送局のアナウンサーたちでした。
橋本愛さんは、NHKのインタビューに答えてこう語っています。
「ラジオという夢の機械だと思っていたものが、悪魔の拡声器になってしまった」
という実枝子さんのセリフが心に深く響きました。
私自身、言葉を発信する側としての恐さを知ると同時に、言葉を受け取る側としても、真実とうそを見極める力を養わなければと強く感じました。
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ただ原稿を読むだけの仕事ではなく、ラジオ放送のアナウンサーという夢の職業が、
「悪魔の拡声機」
に早変わりしてしまった事実は、当時の和田実枝子さんにとって恐ろしい、消化しきれない経験でした。
役になりきって演じた橋本愛さんにとっても、やるせない事実だったのでしょう。
森田剛の苦悩する演技がリアルで凄すぎ
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和田信賢アナウンサーは、なんと開戦ニュースと玉音放送の両方に関わっていました。
最初のうちは雄々しい口調で国民を熱狂させるような、放送をしていた和田信賢アナウンサー。
ですが、だんだんと戦争の現実を知っていき、自分の放送する声で、たくさんの若者を戦地に向かわせているという事実に、葛藤を抱くようになっていきました。
戦局が不利になってきた大日本帝国は、不都合な情報を隠して、小さな成果だけを誇張して発表させるようになりました。
和田信賢アナウンサーは日増しに「大本営の発表」が信じられなくなります。
そんな中、学徒の出陣を勇ましく送り出す実況放送を担当しなければならず、思い悩む和田信賢アナウンサーを、森田剛さんは、共演者が圧倒される熱量で演じていたそうです。
妻の実枝子を演じる橋本愛さんは、その和田信賢アナウンサーを「叱咤して目覚めさせる」役回りですので、ある意味、その森田剛さんの熱量を上回る熱量で体当たりしなければならなかったわけです。
ですから、普段の演技とは全く違う、自分を投げ捨てた憑依系の演技で立ち向かったのでしょうねー。
インタビューで涙ぐみながらこう語っています。
私は、この作品で(実枝子を)演じている間に
だいぶ(精神的に)やられてしまって
癒されない傷があって森田さん自身が本気でぶつかって
和田信賢さんという実在した一人の人を演じている熱量を感じて
「今受けている傷は間違いじゃない」
と
「逃げてはいけないなと思いながら演じていました」
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まとめ
第2次世界大戦中のドイツでも、ヒトラーやゲッベルスのプロパガンダを実践するための、重要な役割を担っていたのが、アナウンサーのハンス・フリッチェでした。
この人は、ナチスドイツのヒトラー&ゲッベルスの元、新聞局長、ラジオ放送局長をとして、さまざまなプロパガンダを担っていました。
言うなれば、第二次世界大戦中、ヒトラー、ゲッベルスに並んで、ナチス時代の、ラジオから流れてくる3つの有名な声の一つでした。
この人は、戦後、ニュルンベルク裁判では無罪になりましたが、1947年の西ドイツの非ナチ化裁判では、「反ユダヤ主義煽動」と「戦争後半の戦局に関する虚偽放送」の罪に問われて、労働奉仕9年の判決を受けています。(引用元: wikipedia.org)
つまり、和田信賢さん等、このドラマに出てくるアナウンサーたちは、もし、国がドイツであったら、有罪判決を受けていたわけです。
この重いテーマが、アナウンサーの立場からリアルに表現されていて、ずっしり重みのあるドラマでしたね!